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コラム
自然素材の壁と塗装で整う、aisuの家の心地よさ

「この空間、なんか落ち着きますね」。aisuの家のモデルハウスをご案内していると、そんな声をよくいただきます。この「なんか」は、なかなか言葉にするのはむずかしいですが、じつは素材が持つ力だと感じています。
aisuの家では、いわゆるビニルクロスは使っていません。ビニルクロスは、一般的にはよく使われている素材で、施工がしやすく、コストも抑えられ、汚れにも強いのが特徴。合理的で、建てる側としてはありがたい存在です。
しかし、どうしても息苦しく感じてしまうのです。光がまっすぐ跳ね返り、音も響いてしまう。室内にいるのに、どこか「箱」の中に閉じ込められているような感覚があります。すべてが均一で、変化がない。だからこそ、逆にこちらが「ちゃんとしていなければ」と、なんとなくそわそわしてしまうのかもしれません。

aisuの家では、ルナファーザーという紙素材のクロスと、AEPという水性塗料を組み合わせて使っています。ルナファーザーは、木の繊維や再生紙を原料とした、ドイツ生まれの自然素材。その上に塗るAEPは、有害な成分を含まず、においもありません。
この組み合わせが生み出す空間は、言葉ではなかなか説明できないのですが、たしかに「空気が違う」と感じられます。光はやさしく拡散し、音は穏やかに吸い込まれ、壁に触れれば、ほんのりとした温もりと、小さな凹凸の手ざわりがあります。ビニルクロスのようにピカピカではありませんが、でも、それがいいのです。つくり込みすぎないから、暮らしの風景が映えてくるのです。

ちょっとくらい汚れても、それさえも許せてしまう。壁が汚れたら、気になるところだけ塗り直せばいい。完璧な状態を保つより、手をかけながら家といっしょに時を重ねていく。そんなおおらかさが、ちょうどいい暮らしにつながっていくのだと思います。
時間が経てば、日焼けしたり、色が変わったり、塗り直した跡が出てきたりします。でもそれは「劣化」ではなく、積み重ねた暮らしの証。家族の時間が、少しずつ壁に刻まれていくような感覚です。

「なんか落ち着くね」その理由をひとつに決めることはできないですが、もしかしたらそれは、素材の持つ力だったり、壁ににじむ暮らしの記憶だったりするのかもしれません。aisuの家は、そんなふうにして、「感覚」に寄り添う家づくりを続けています。完璧じゃないことを、愛おしいと思える空間。そんな家が、心地いいのです。