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コラム
aisuの家が大切にする「玄関庇」デザインのルール

aisuの家では、設計においていくつかの小さなルールを大切にしています。それは、見た目のためだけでなく、暮らしの中でふと感じる「心地よさ」につながっていくもの。
今回お話ししたいのは、そんなデザインルールのひとつ「玄関庇を1m以上とる」ということについてです。「庇(ひさし)って、そんなに必要?」そう思われる方もいるかもしれません。けれど、これには明確な理由があります。

まず、aisuの家では、標準仕様としてユダ木工さんの木製玄関ドアを採用しています。桧(ひのき)のやわらかな表情と手ざわりが、毎日の出入りにそっとぬくもりを添えてくれる、美しいドアです。しかし、自然素材であるがゆえに、雨や日差しにはとても敏感です。
とくに強い雨が続いたり、夏の直射日光を長く受けたりすると、木が膨らんだり、反ったりしてしまうことがあります。せっかくの天然木の風合いを、できるだけ長く楽しんでいただきたい。そんな思いから、ドアを守るためのしっかりとした庇を設けています。

たとえば、雨の日。鍵を探したり、傘をたたんだり、子どもを抱えて出入りしたり。そんな普段の何気ない動きのなかで、庇があるかないかは、とても大きな差になります。1メートルという奥行きがあることで、玄関先にしっかりと雨除けのスペースが生まれます。
両手がふさがっていても、荷物をちょっと置いて落ち着ける場所がある。そうした、ほんの数秒の「余裕」が、日々の暮らしをやさしく整えてくれます。

また、建築的な目線から見ても、しっかりと張り出した庇は、家の顔を引き締めてくれます。玄関まわりのバランスが整い、住まい全体がどこか誠実で、安心感のある表情になります。庇があるだけで、家がすっと地に足をつけたような、落ち着いた佇まいになるのです。

さらに、玄関先にできた「ちょっとした屋根の下」は、外でも中でもない、心地よい半屋外の空間。そこにベンチを置いて荷物の一時置き場にしたり、ご近所の方と軽く立ち話をしたり。そんな風に、庇の下が暮らしの場として広がっていくこともあります。
「玄関庇を1m以上とる」ことは、単に機能のためだけではありません。家族を迎え入れ、送り出す場所に、やさしい余白を設けること。そして、木の風合いを愛おしむ気持ちや、毎日の動きを少しだけ丁寧にするための工夫でもあります。
aisuの家は、そんな目には見えにくい「居心地のよさ」を、これからもひとつひとつ積み重ねていきたいと思っています。